ザ・コールセンター 小説

【小説】ザ・コールセンター 第4話「オペレーターとゴミの差」

2015/08/11

【小説】ザ・コールセンター

このお話は・・・

全国のコールセンターで働く派遣社員3人が「ま、いいカンジじゃね?」と思う(はず)!
満を持さず、誰も待望していないけれど小説化!!

コールセンター(某大手通信のネット回線開通の工事日をする窓口)を舞台に新人オペレーター菊川文子と、某アニメ並の完璧超人 鮎川義人が繰り広げるドタバタ劇。

約2年間、LD(リーダー)を務めた筆者がコールセンターと派遣社員の現実をけっこう赤裸々めに、ソコソコのスケールで綴っていきます。




こんばんは。小鳥遊です。

あんぱんキングさん、お待たせしましたwww 来週から夏休みなのでボチボチ進めていきます。

当初、コールセンターを舞台にした「半沢直樹」っぽくいこうと思いましたが、昔NHKでやっていた「ザ・ホスピタル」っていう医療ドラマみたいに、いくつかの話が並行して進むような話にしていけたらなぁと思っています。

今日からメインキャラクターを一人増やします。

では第4話、よろしくお願いします。

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今回の登場人物

菊川文子(きくかわふみこ)

主人公 二十●歳 コールセンター未経験 派遣社員 全編通しての語り手 タバコはピアニッシモ

鮎川義人(あゆかわよしひと)

主人公 三十三歳 コールセンター歴3ヶ月 派遣社員 タバコはケントの1ミリ

相葉智之(あいばともゆき)

教育係 三十三歳  コールセンター歴1年のSV(スーパーバイザー) 正社員 ※今回は名前だけで登場

鳴尾浜陽子(なるおはまようこ)

四十六歳 パート パーマのおばちゃん リーダー 絶賛婚活中 加齢臭がひどい

【小説】ザ・コールセンター 第4話「オペレーターとゴミの差」

通信のサービスは複雑だ。料金プラン、工事方法、協力業者とのやりとりのルール・・・コールセンターのオペレーターには覚えることは山ほどある。そしてその手順をひとつ間違えただけで、お客様に多大な迷惑がかかる。

一応の独り立ちから1週間。手痛い案内ミスや処理ミスで注意を受けている。

 

「菊川さん。あなたまたやったわね!!」

(うっ、この声は・・・)

 

今日も本場フランスのブルーチーズを思わせる加齢臭を漂わせて、彼女は髪をいじりながら近づいてきた。

リーダーの鳴尾浜陽子(なるおはまようこ)さんは、押しも押されぬこのセンターのお局様だ。

 

 

「あなたがお客様から『夜じゃないといない』って聞いてたのに書いてないから、木本くんが仕事中にかけて怒られちゃったじゃない!」

「あっ、ご、ごめんなさい。」

「まったくもう!そんなことだからその歳になっても派遣なのよ!」

 

(・・・派遣は関係ないでしょうが!!)

 

口まで出かけた反論を慌てて飲み込んだ。

どんな職場でもお局様に楯突くのは得策ではない。長い派遣生活の中でイヤというほどそれを味わってきた。「反抗的だ」などと噂を立てられれば、派遣契約にも影響が出かねない。

そして何より、ここはオペレーションミスを出したわたしが悪い。

 

「ちょっとあなた、聞いているの!?」

(近い近い近い!!!)

 

急接近した彼女の頭から、フケがパラパラと舞い落ちる。

加齢臭と口臭の混ざり合った強烈な臭気が迫ってくる。

 

「ワッ、ワガリマジダ(わかりました)、ウェッ、グフォッ。」

わたしは、こみ上げてくる吐き気を含んだ咳を必死で飲み込んだ。

 

それからわたしは、お客様から聞き出したことは「一字一句もらさずに」記入することに務めた。

 

(こうして見ると、確かに聞いていたのに書き漏らしていたこと、結構あるなぁ)

今回ばかりは鳴尾浜さんに良い指摘をしてもらったというべきか。

 

 

 

それから数日は平和な日が続いた。

しかし、平和ほどはかなく壊れやすいものはない。その日、わたしに声をかけてきたのは・・・鮎川さんだった。

 

「菊川さん。これとこれと・・・あとこれと。処理したの君だよね。」

「えっ、ええ、そうですけど。何か不都合がありました?」

「不都合って・・・こんなに長くムダにダラダラ書いてたら、次に対応する人がわかりにくいだろ?」

 

そう言われて確認した自分の履歴は・・・確かに読みにくい。

でもじゃあどうすればいいのかと言われると、自分の中で今出せる答えはない。

考えのまとまらず絶句するわたしの様子を確認すると、彼は口を開いた。

 

「最初のうちは難しいと思うけれど、漏れなくムダもない履歴を意識するようにしてね。」

「わ、わかりました。ポイントをコンパクトにまとめられるよう、意識します。」

 

ピクッ

彼の額に血管が浮いた。

わたしは瞬間的に悟った・・・やばい、これ、地雷踏んだわ。

鮎川さんの顔には、怒りを通り越した、哀れみにも似た表情が浮かんでいた。

 

「じゃあ聞くけど、ポイントって何?」

「えっ、ええと・・・」

「コンパクトにまとめるっていうけど、何がポイントかもわからないのにどうやってまとめる気だい?」

「ええと・・・その・・・次に対応する人が読みやすいように・・・かな。」

「適当なことを言うな。」

「すっ、すみません。」

 

厳しい視線がわたしを貫く。

自分の浅はかさを見透かされたみたいで恥ずかしかった。

 

うつむいてしまったわたしを見て、言い過ぎたと思ったのだろうか。彼はバツが悪そうに頭をかいた。

 

「まぁ、意識していればいずれできるようになるから、とにかく気をつけてね。僕も少しずつ教えていくから。」

 

その言葉を聞いて・・・今度はわたしの中のブレーキが音を立てて外れた。

イスから立ち上がると、鮎川さんに向かって一歩踏み込んだ。

 

「・・・ですか?」

「えっ?」

「いつかっていつですか?わからないなら適当なことを言わないでください!」

「ご、ごめん。でも、近いから少し後ろに下がろうか。」

「わたしはもう派遣切りにはあいたくないんです!田舎の両親に心配かけ続けるのがイヤなんです!資格もスキルも経験もないままこんな歳になっちゃったし、どうしてもここで正社員に登用されたいんです!!先輩だったら今すぐわたしを完璧な履歴が書けるようにしてください!!!」

 

言いたいことを言ってせいせいしたけれど・・・しばらくしてから我に返って、青ざめた。

周りを見ると、「何ごとか?」という目でこちらを凝視していたオペレーターたちがわざとらしく業務に戻っていった。

誰が見ても逆ギレだ。自分で勝手に抱えている派遣への負い目や不安、待遇への不満や焦りを何の関係もない鮎川さんにぶつけてしまった。

気まずい。激しく気まずい。でもちょっぴり、スッキリした。

 

鮎川さんはまったく気にしていないようだった。気分を害したり怒っている様子がない。

20秒ほど考えた後、アゴでついてくるよう指示を出すと、こういった。

 

「だったら今すぐ完璧な履歴を書けるようにしてやるよ。」

「えっ?」

「ついでに、仕事のできるオペレーターと役に立たないゴミを10秒で見分ける方法を教えてやろう。」

 

 

連れて来られたのは、インバウンドがアサインされる席だった。

わたしたちの所属するコールセンターでは、光回線の申込をしたお客様に対して架電をするアウトバウンドと、お客様からの連絡に対応するインバウンドが混在している。

鮎川さんは、イスを引いて座るように促してきた。

 

「座って。」

「えっ、いや。わたし、まだインバウンドの研修受けてないんですけど。」

「僕が今から教える。基本はアウトバウンドと同じだから大丈夫。その後つきっきりでつくからわからなければ、保留にして聞いてくれればいい。」

「そ、そんな無茶な!」

「じゃあまともな履歴を書けず、次で契約打ち切られるかい?」

 

その後、しばらく資料を読み合わせたあと、わたしは初日と同じくらい緊張しながらインバウンド業務に入った。

 

最初からどんな理由で架電するかが決まっているアウトバウンドに比べて、インバウンドは何がくるか、電話を取るまでわからない。

工事日の変更や延期、わたしがまだ知らない問い合わせがきたらどーしよう・・・

心臓の音が聞こえてくる。

 

電話がなった。

教わったとおり電話を受けようとしたが、手汗で滑ってマウスのクリックがうまくできなかった。

お客様確認をして顧客情報を見ると、それまでの対応が画面いっぱいに表示される。

・・・絶句した。

(ど、どこが最初かわからん!次に何をすればいいのかわからん!!・・・しまいにゃ、誤字脱字・文法不備が多くて意味がまったくわからん!!!)

 

・・・その意味不明な履歴を書いたのは・・・わたしだった。

 

その後も鮎川さんのヘルプで何とかこなすものの、自分の書いた履歴に当たる度に長時間の保留でお客様をお待たせしてしまった。

 

わかりやすい履歴を書く人、わかりにくい履歴を書く人、丁寧な人、雑な人・・・インバウンドで人の書いた履歴を見ていると色々なことがわかってくる。

そんな中、群を抜いてわかりやすい履歴をいくつか見つけた。

 

次回対応者への明確な指示、要点だけが過不足なくしっかりとまとめられた経緯説明、連携が必要な他部署への連絡先もきちんと書かれているから、わざわざ別の台帳を開く必要もない。

 

一切の無駄なく解かれた数式を見る数学者って、おそらくこんな気持ちなのだろう。

その履歴の作成者の声がわたしを現実に引き戻した。

 

「僕が言いたいこと、わかってくれた?」

 

履歴をないがしろにしたつもりはなかったけれど・・・お客様への案内やシステムの処理ばかりに注意を向けていた浅はかさを思い切り突きつけられたわたしに、返す言葉はなかった。

その様子を満足気に見る鮎川さんに、少しだけ殺意がわいた。

(この、ドS!!)

 

「履歴の良し悪しはセンター全体の効率を左右する。インバウンドがこれまでの経緯・注意すべきポイント・次のアクションを5秒で理解できる履歴を書けるかどうかが、センターに貢献できるオペレーターと、誤案内や非効率化を広めるゴミの違いだ。」

 

 

その後しばらくすると、鮎川さんは、わたしにアウトバウンドに戻るよう指示してから自分の業務に戻っていった。

 

去り際。

「『今すぐ書けるようにしろ』か・・・生意気なやつだ。」

そう言って彼がニヤリと笑ったことを、わたしは知る由もなかった。

 

つづく

本日の教訓

わかっていないのに適当な返事をしない

インバウンドが5秒で対応方針を決められない履歴を書くオペレーターはただのゴミ

次回予告

彼の言葉に、わたしはなぜか「ウラギリ」の4文字を思い浮かべた。

「真心なんて電話じゃ伝わらない。真心込めればお客様に通じるなんてのは、知識とスキルを磨かないオペレーターのいいわけだ。」

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(たかなし むつき)と読みます。元某大手通信系コールセンター派遣社員。36歳で派遣脱出を達成!今はシステム運用の中の人です。コールセンター仕事術や転職など、自分でいうのもアレですが、いいこと言ってます。 >> 詳細プロフィール


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