ザ・コールセンター 小説

【小説】ザ・コールセンター 第7話「Give me a Chance!」

【小説】ザ・コールセンター

このお話は・・・

全国のコールセンターで働く派遣社員3人が「ま、いいカンジじゃね?」と思う(はず)!
満を持さず、誰も待望していないけれど小説化!!

コールセンター(某大手通信のネット回線開通の工事日をする窓口)を舞台に新人オペレーター菊川文子と、某アニメ並の完璧超人 鮎川義人が繰り広げるドタバタ劇。

約2年間、LD(リーダー)を務めた筆者がコールセンターと派遣社員の現実をけっこう赤裸々めに、ソコソコのスケールで綴っていきます。




こんにちは。小鳥遊です。

突発的な「書きたいネタ」が割り込んできてしまい、なかなか進まなくて申し訳ありません。

打開策として、毎週何曜日というように固定して予約配信にしようと考えています。

何曜日がいいですか?

参考にしたいので、コメント・TwitterGoogle+でお寄せいただけると幸いです。

 

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今回の登場人物

菊川文子(きくかわふみこ)

主人公 二十●歳 コールセンター未経験 派遣社員 全編通しての語り手 タバコはピアニッシモ

鮎川義人(あゆかわよしひと)

主人公 三十三歳 コールセンター歴3ヶ月 派遣社員 タバコはケントの1ミリ

相葉智之(あいばともゆき)

教育係 三十三歳  コールセンター歴1年のSV(スーパーバイザー) 正社員

鳴尾浜陽子(なるおはまようこ)

四十六歳 パート パーマのおばちゃん 事あるごとに派遣社員をバカにした発言をする リーダー 絶賛婚活中 加齢臭がひどい 口臭もひどい フケもひどい

木本俊哉(きもととしや)

サブキャラ 二十四歳 コールセンター未経験 派遣社員 いまどきの若者 新人で文子の同期

【小説】ザ・コールセンター 第7話「Give me a Chance!」

「お申し込み時のご案内がいたらず、誠に申し訳ございません。」

 

よかった、何とかわかっていただけた。

でも・・・あと4件・・・はぁ、胃に穴があきそう・・・

 

わたし、菊川文子がこのコールセンターで仕事をはじめて、間もなく2ヶ月。

・・・クレームの沼にはまっていた。

 

OJTでの1ヶ月が過ぎた頃、わたしたちも新人を卒業し、各チームに配属されることとなった。

このコールセンターでは、インターネット回線の利用申込をしていただいたお客様に連絡、工事日程、およびその付帯業務を行っている。

所属するメンバーは、それぞれの役割をもった1組5人前後のチームでの業務に従事することになる。

 

例えば・・・

  • お客様からの問い合わせを受け付けるインバウンド・チーム。
  • ネット回線の申込をしていただいたお客様に初めて架電する新規チーム。
  • 1回めの電話に出なかったお客様に2回め、3回めの電話をするチーム。
  • お客様のご希望・ご都合や、各種手続きの都合などで特定の日時にかけなければいけないお客様を受け持つチーム

・・・といった具合だ。

 

このセンターでの花型チームは、SVの相葉さんがリーダーを務める・・・といっても実質は鮎川さんが選手兼任監督として仕切っている「新規チーム」。

初回のコンタクトで工事微調整まで決めてしまえば在庫にならないため、ハイパフォーマーをそろえた最強の布陣で構成されている。

成約率も架電数もほかのチームよりはるかに高く、毎月のMVPは新規チームのメンバーが独占している状態だ。

ちなみにクロージングできないお客様をこのセンターでは在庫という。

・・・モノ扱いしてるみたいで最初は戸惑ったが、もう慣れた。

 

(新規チーム・・・入れるといいな・・・)

 

このコールセンターでは、MVPに対して表彰だけでなく、5,000円の報奨金が出る。

時給1,100円の派遣社員の身に5,000円は大きい。

そして何より・・・新規チームはクレームに当たる確率がほかの他と比べて圧倒的に低い。

わたしが新規チームへの配属を切望したのもわかってもらえるはずだ。

 

しかし、わたしが配属されたのは、時間指定のあるお客様に対応するチーム。

通称「ゴミ捨て場」である。

・・・初めて聞いたときは「お客様をゴミ扱いするなんて」と思ったが・・・もう慣れた。

コールセンターで働いていると、人間として大切な何かがマヒしていくような気がするのは、気のせいだろうか。

 

このチームはとにかくクレームが多い。

1回めの架電でクロージングできないお客様というのは、たいてい何らかの事情を抱えている。

そこに配慮できないオペレーターが傷に塩を塗りこむ。

しかもその状態で、何の履歴も残さずに時間指定をして、わたしたちに押し付けてくるオペレーターが多い。

このチームが「ゴミ捨て場」と呼ばれる所以(ゆえん)である。

 

毎日大量の予約案件があり、約束の日時にかけきれないことがデフォルト。

それがまた新しいクレームを生む。

 

しかもチームを率いるリーダーは・・・鳴尾浜さん。

・・・人生オワタ\(^o^)/・・・

 

わたしをこの地獄に引きずり込んだのは、他でもない鳴尾浜さん。

「新人とは思えない業務知識を持っており、様々な案件に対応しなければいけないこのチームに適任」と熱弁を振るったらしいが・・・

 

絶対、アノことを根に持っている!

っていうか、アレはわたしのせいじゃない!!

確かにお客様への対応で鳴尾浜さんと意見が対立したけれど、面と向かって「クソババア呼ばわり」したのは、わたしではなく鮎川さんだ。

・・・そりゃわたしも心のなかでは思ったけれど・・・

それを裏付けるかのように、わたしには連日のように他のメンバーで炎上してしまい手が付けられなくなったお客様への架電が命じられるようになった。

 

「菊川さん。このお客様対応しておいて。わたしのようなクソババアと違って、真心の対応ができる菊川さんならカンタンでしょ?」

(うわぁ・・・相当根に持ってるわ・・・)

 

 

*****************************

・・・タバコの量が、増えた。

今のところは何とか指定時間にお客様に連絡ができている。

ただ、午後は午後でヘヴィ級の案件が控えている。

 

鼻から煙を吐く女はモテないって雑誌に載ってたような気がするけれど・・・知らん!

モクモクモクモク・・・

 

と、その時!

見覚えのあるメガネが視界に入ったかと思うと、喫煙ルームのドアが開いた。

今日は、ピンクのシャツがよく似合っている。

 

慌てて煙を吸い込み、顔を引き締めたが・・・どうやら間に合わなかったようだ。

「菊川さん。休憩中に何をしようと勝手だけど、ちょっと気が緩みすぎだね。」

 

 

*****************************

「というわけなんです。これじゃ数字の上げようがないじゃないですか!!」

「・・・」

「それに比べて同期の木本!特定架電のスキル研修も受けてないのに新規チームに配属なんて、不公平です!」

「・・・」

「相葉さんや鳴尾浜さんに媚び売りまくって新規チームに入って楽な仕事ばっか!あんな媚びを売るしか能がないヤツより、わたしを新規チームに入れたほうがメリットあるのに、もう!!」

 

鮎川さんはメガネを拭きながら、わたしの不満を黙って聞いていた。

やがてメガネをかけ直し、わたしに向き直る。

ZIPPOを擦る音のあと、彼の吐いた煙が天井に立ち上った。

 

「じゃあ聞くけど、君は『もうどうしようもないといえるほどベストを尽くした』と本当に言えるのか?」

 

「えっ?」

 

この2ヶ月のあいだ鮎川さんを見てきて、彼はやる気のあるメンバーに対して好意を持っていると思っていた。

だから、明日から新規チームに引き上げてもらえるとは思わないけれど、「大変だねぇ」の一言くらいは期待していた。

 

わたしのことなどお構いなしに、鮎川さんの話は続く。

「木本くんが媚びを売るしか能がないと言っていたけど、君は媚びを売る能すらないじゃないか。」

「うぐっ」

「それに彼のパフォーマンスは悪くないよ。結果出さないと新規チームに残れないことをわかっているんだろうね。残業もつかないのに僕のところによく質問にきてるのを、君は知っているのかい?」

「うぐぐっ」

「きっと派遣は目に見える形で結果を出さなきゃ生き残れないということを経験しているんだろう。まだ若いのに大したものだよ。」

 

わたしは何も言えなかった。

オバちゃん相手にお菓子を配って雑談をして笑っているイメージしかない彼が、影でそんな努力をしているなんてまったく知らなかった。

何も知らずに、何の努力もせずに愚痴ばっかり言っているわたしのようなオバちゃんより、彼のほうがずっと大人だ。

 

「生き残りたければ、待って待って待って、時には自分で引き寄せて、やっともらったワンチャンスをモノにするしかない。」

「・・・」

「どんな手を使ってでも、泥にまみれて、たとえ君のような人間に蔑まれてもしがみつく。それでも掴めるかわからない。それがチャンスだ。」

 

そういうと、彼は喫煙室を後にした。

「さあ、君はどうする?このままクレームの泥沼に沈むのか、それとも・・・」

 

 

*****************************

タイムカードにサインをもらうため、SV以上の管理職を探していたら、相葉さんが目に入った。

ちょうど手が開いていたようで、向こうから声をかけてくれた。

 

「で、調子はどう?ずいぶんクレームで苦労しているみたいだけど。」

「まぁ、そうですね。」

「僕としては菊川さんは新規チームに欲しかったんだけどなぁ・・・鳴尾浜さんにゴリ押しされちゃって。」

「そうですか。」

 

 

(今日はスーパーで肉の特売だったな)

タイムカードを受け取りながら、わたしはこの後のスケジュールを脳内で確認した。

立ち去ろうとするわたしを、相葉さんが呼び止めた。

 

「鮎川くんも入って2ヶ月目はゴミ捨て場に配属されたんだよ。」

「えっ?鮎川さんが?」

「あの態度だから管理職に敵が多いいしね。あの時はずいぶん文句を言ってたよ。」

「でも、今は新規チームですよね。」

 

相葉さんは何か思い出したくないことを思い出した時のような、少し気まずい笑顔をつくった。

「それでもMVP取っちゃったんだよ。それを知ったクライアントから直接『彼を新規チームに入れてパフォーマンスを上げろ』とお達しが出たというわけさ。」

 

・・・パネェ、マジ、パネェっすよ、鮎川さん。

 

 

*****************************

翌日。

わたしは遅番だというのに2時間早く出勤した。

そして、その日の時間指定架電リストを見て、大きく分類分けをした。

また今日掛けなくてもよかったり、時間指定が入っているがまだ掛けられない顧客を整理すると、だいぶリストが減った。

(よし、これなら今日中に掛けられる)

 

あれからいろいろ考えたけれど、木本のようなロビー外交はわたしのコミュ力ではできそうにない。

だったら、できることは・・・ひとつしかない。

 

業務が始まると、わたしは鼻血が出るくらい集中して架電に取り組んだ。

きっと目の前に雷が落ちようと気付かなかっただろう。

 

終礼。

一日の最後に発表される今日のベスト5に、架電数でわたしの名前が載った。

 

終礼が終わり、荷物を取りに席に戻ると、コーヒーが一本おいてあった。

あの人がいつも飲んでいるものだった。

・・・嬉しかった。嬉しくはあったが・・・コーヒーは好きじゃない。

 

 

それから1ヶ月。

MVPは取れなかったけれど。

わたしに新規チームへの転籍が告げられた。

 

つづく

本日の教訓

泥にまみれても人に蔑まれてもチャンスを掴む

どんな状況にも、必ず突破口はある。

次回予告

「お前はまたアノ時の続きを・・・同じ失敗を繰り返すつもりか、鮎川。」

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(たかなし むつき)と読みます。元某大手通信系コールセンター派遣社員。36歳で派遣脱出を達成!今はシステム運用の中の人です。コールセンター仕事術や転職など、自分でいうのもアレですが、いいこと言ってます。 >> 詳細プロフィール


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