ザ・コールセンター 小説

【小説】ザ・コールセンター 第9話「エースのプライド」

2015/12/11

【小説】ザ・コールセンター

このお話は・・・

全国のコールセンターで働く派遣社員3人が「ま、いいカンジじゃね?」と思う(はず)!
満を持さず、誰も待望していないけれど小説化!!

コールセンター(某大手通信のネット回線開通の工事日をする窓口)を舞台に新人オペレーター菊川文子と、某アニメ並の完璧超人 鮎川義人が繰り広げるドタバタ劇。

約2年間、LD(リーダー)を務めた筆者がコールセンターと派遣社員の現実をけっこう赤裸々めに、ソコソコのスケールで綴っていきます。




お久しぶりです。小鳥遊です。

ザ・コールセンターのお時間です。

先週は空いちゃいましたが、忘れてないです。

ちゃんと更新しますので、今後共よろしくお願いいたします。

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今回の登場人物

菊川文子(きくかわふみこ)

主人公/二十●歳/コールセンター未経験からスタートした新人/派遣社員/全編通しての語り手/タバコはピアニッシモ

鮎川義人(あゆかわよしひと)

主人公/三十三歳/派遣社員/タバコはケントの1ミリ/メガネ/声が低い/このコールセンターの絶対エース/正論を歯に衣着せずズバズバいうため敵が多い

相葉智之(あいばともゆき)

教育係/三十三歳/コールセンター歴1年のSV(スーパーバイザー)/正社員

【小説】ザ・コールセンター 第9話「エースのプライド」

今日は雨がシトシト降っている。

LD(リーダー)への昇格を打診された翌日。

3日以内の返事を要求され、わたしは・・・戸惑っていた。

 

(そもそも、断るという選択肢はあるのだろうか・・・)

 

お飾りとはいえ、一応は管理職。

引き受けておけば、当面の雇用は確保されるだろう。

しかも時給は200円アップ!

毎月、月末にはオニギリ1個で1日を過ごすわたしには、果てしなく魅惑的なオファー

 

・・・だけど・・・

リーダーなのである。

肩書だけとはいえ、「あの人」より上になってしまうのである。

 

まぁ、あの人はきっと気にしないだろうけど。

でも・・・このオファーを受けるということはあの人よりお給料をたくさんもらって、あの人より上のことをしなければいけないわけで・・・

 

そんなことを考えていたら、朝礼の時間がやってきた。

 

*****************************

 

「本日、鮎川さんは体調不良で来れるかどうかわかりません。いないものと考え、一人ひとりがパフォーマンスを意識してください。」

 

朝礼当番の相葉さんの言葉に、思わず耳を疑った。

鮎川さんが・・・休み?

 

そりゃ鮎川さんだって人間だ。

体調を崩すこともあるだろう。

だけど、あれだけストイックな人が休むなんて・・・

ちょっと、いや、かなり、驚いた。

 

まあ、でも・・・いつも人の3倍頑張ってるんだから、たまには休んだっていいよね。

あとでLINEでも送っとこ。

・・・あ、あの人のLINE教えてもらってなかった・・・

 

*****************************

 

昼過ぎ。

SV達がざわついていた。

 

今日の目標を30%下回るペースで推移している。

ただでさえ毎日ギリギリ達成できるか、できないかという状態なのに、このままでは間違いなく目標割れだ。

 

原因は・・・もちろん・・・彼だ。

 

鮎川さんは毎日、全体の15%以上という凄まじい数字で、このコールセンターを支えてくれている。

この分がごっそり抜け落ちてしまっているのだ。

 

それだけではない。

彼は、メンバーのどんなしょうもない質問にも答えてくれていた。

それまで彼が一手に担っていたメンバーの質問が、LD・SVに押し寄せた。

 

鮎川さんのじっくりと時間を取り、図を交えたわかりやすい説明に慣れた彼らに、今日の管理職の説明は伝わらない。

ミスが増える。

それをカバーするだけで時間が過ぎる。

管理者たちの焦りがさらにミスをつくっていく。

 

わたしでも教えられることはあるのだろうが、管理職でないわたしに、その権限はない。

・・・これは・・・ヤバい。

 

 

 

その時だった。

 

 

「ふぅ、間に合ったか。」

 

鮎川さんだった。

マスクをしているが・・・熱で紅潮した顔を隠しきれていない。

まだ暑いのに、上着を着ている。

 

「鮎川君、大丈夫なの?」

相葉さんが心配そうに声をかける。

鮎川さんは、それには答えなかった。

 

「相葉さん。今日、遅番に振り替えてもらっていいですか?今から立て直しましょう。」

「・・・そ、そりゃ構わないけど、大丈夫なの?」

「無駄口叩いてる暇があったら、残ってるリストを整理してください。整理がめちゃくちゃだからメンバーが混乱するんです。」

「・・・」

 

ドカッ

 

わたしの隣の席に乱暴に座る。

(大丈夫ですか?)

口元まで出かけた言葉を飲み込んだ・・・大丈夫なわけがない。

 

パソコンが立ち上がるまでの間、パートのおばちゃんが駆け寄ってきて、しょうもない質問を始めた。

前々から思っていたけれど、このおばちゃんは人の話を聞かない、説明しても覚える気がない。

その場のピンチさえ乗り切ればそれで良いと思っている。

今している質問だって研修でやってるし、鮎川さんが何度も説明しているのを見ている。

 

(まったく、この人は・・・)

 

鮎川さんは、怒りの形相で立ち上がろうとしたわたしを手で制した。

「問題ない。ハンデだよ、ハンデ。ここから逆転してやるから。まぁ見てろ。」

 

それから鮎川さんは、いつもは20回以上いく喫煙スペースに一度も行くことなく架電とエスカレ受け(質問や引継ぎの対応)をこなし・・・

・・・本当に今日のランキング1位をとってしまった。

 

*****************************

 

明日の準備を終えて喫煙ルームに行くと、力なく煙を吐く鮎川さんがいた。

わたしを見つけると、めんどくさそうに手をあげた。

 

「今日は助かりました。鮎川さんがいなかったら目標未達でした。」

「まぁ、ギリギリだったけどな。」

「明日は休みですよね。ゆっくり寝てください。」

「・・・そうさせてもらう。」

 

まだ半分以上残っている煙草を灰皿に投げ捨て、喫煙ルームを去ろうとする鮎川さんを、わたしは呼び止めた。

 

「鮎川さん。どうしてそこまで頑張るんですか?

鮎川さんだったら、一日くらい休んでも何も言われませんよ。

目標管理だって、クライアントへのお詫びだって、わたしたち派遣には関係ないじゃないですか!?」

 

彼は、足を止めてゆっくりと振り返った。

胸ポケットから煙草を取り出し、口にくわえる。

 

「僕が休んだら、みんなが不安になるだろ?

ほかのメンバーさんがクレームや面倒な案件を引き受けて新規をかけることに集中させてくれるんだ。

無様な仕事は、申し訳ないだろ?」

 

 

フーッ

立ち上る煙をぼーっと眺めながら、独り言のように言葉を紡ぐ。

 

 

「まぁ、それも嘘じゃないんだけど。

僕はてっぺんが好きなんだ。

僕より上がいるなんて、考えただけで胸クソが悪くなる。

一日休めば、トップでいられる日が一日なくなるってことだろ?」

そう、子供っぽく笑った。

 

 

*****************************

 

翌日。

まだ期限まで一日猶予があったけれど。

わたしは、相葉さんにLD昇格を了承する返事をした。

 

つづく

本日の教訓

エースはチーム全員の期待を背負っていることを忘れない

エースの原動力は、結局はただの負けず嫌いだったりする(笑)

次回予告

相葉さんの胸ぐらをつかみ上げた鮎川さんは、噛みつくように叫んだ。

「それが人間のやることか!!!!」

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(たかなし むつき)と読みます。元某大手通信系コールセンター派遣社員。36歳で派遣脱出を達成!今はシステム運用の中の人です。コールセンター仕事術や転職など、自分でいうのもアレですが、いいこと言ってます。 >> 詳細プロフィール


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