ザ・コールセンター

【小説】ザ・コールセンター 第14話「呪われた運命」

2015/12/11

【小説】ザ・コールセンター

このお話は・・・

全国のコールセンターで働く派遣社員3人が「ま、いいカンジじゃね?」と思う(はず)!
満を持さず、誰も待望していないけれど小説化!!

コールセンター(某大手通信のネット回線開通の工事日をする窓口)を舞台に新人オペレーター菊川文子と、某アニメ並の完璧超人 鮎川義人が繰り広げるドタバタ劇。

約2年間、LD(リーダー)を務めた筆者がコールセンターと派遣社員の現実をけっこう赤裸々めに、ソコソコのスケールで綴っていきます。




今回から数回は、結構過激です。

特に女性の方は気を悪くされる内容になる可能性があります。

お気をつけください。

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今回の登場人物

菊川文子(きくかわふみこ)

主人公/二十●歳/コールセンター未経験からスタートした新人/派遣社員/全編通しての語り手/タバコはピアニッシモ

鮎川義人(あゆかわよしひと)

主人公/三十三歳/派遣社員/タバコはケントの1ミリ/メガネ/声が低い/このコールセンターの絶対エース/正論を歯に衣着せずズバズバいうため敵が多い

【小説】ザ・コールセンター 第14話「呪われた運命」

この大手通信会社の工事日程調整窓口でLD(リーダー)になって数ヶ月。

季節は秋から冬へ差し掛かろうとしていた。

仕事を終えて家に帰ったわたしは・・・荒れ果てた我が家に絶句していた。

  • クレーム対応
  • オペレーターのシフト管理
  • クライアントとの折衝や報告資料の作成
  • セキュリティ啓蒙活動
  • 蛍光灯交換、備品発注、トイレ詰まりの解消などなど総務的な仕事
  • 女性オペレーターの恋愛相談

・・・などなどなどなどなどなどなどなどをこなした上、架電が足りていなければオペレーターとして架電業務にも入る

時間も体力も圧倒的に足りない。

 

覚悟はしていたけれど、まさかこれほど業務量が増えるとは思っていなかった。

白状します。

わたし、オペレーターとしては結構イケてきたと思ってましたよ、ええ。

だからLDだって、もしかしたらできちゃうんじゃないかなぁとか思い上がったことを考えておりました。

 

連日の残業で家に帰る頃には日付が変わっているから、帰り道にコンビニで買ったお弁当食べて1分1秒を惜しんで眠る毎日。

この数ヶ月、布団干したり掃除機をかけた記憶がない。

洗濯干すのも面倒だから、買い物行っている間に1週間分をまとめてコインランドリーの乾燥機で乾かしている。

 

確かに役職なしのオペレーターだった頃より幾分か時給はあがった

だけど、支出も増えてしまい、前と同じか、むしろ前より貧乏になってしまった気がする。

何より・・・化粧のノリの悪さとお通じが・・・

はぁ

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「おい、大丈夫か?なんか顔色悪いぞ。」

朝礼が終わった後、そう声をかけてきてくれたのは、鮎川さんだった。

 

LDとしての教育を一通り終えてから、わたしは鮎川さんと少し距離を取るようにしていた。

いや、別に嫌いになったとかそういうことじゃないからね。

むしろ・・・

じゃなかった。

 

これは、人に頼らず出来る限り自分でやってみようという小さな決意から出た行動。

鮎川さんにもそのことは伝えていて、「じゃあ、やれるところまでやってみろ。」と理解あるお言葉もいただいている。

 

(もうダメですー!流しに食器溜まりまくってますー!!)

・・・と口元まで出たけれど、、、かろうじて飲み込んだ。

 

「ええ、今のところなんとか頑張ってます。心配しないでください。」

ニッコリ。

疲れを顔に出さないように。

ウソっぽい表情にならないように。

わたしは完璧な笑顔を演じきった。

そう、女性は皆アクトレスなのだ。

 

「ふーん。」

鮎川さんはそういうと、自分の席に戻っていった。

わたしはほっとすると同時に、少しだけ寂しさを感じた。

 

彼の足がピタリと止まった。

「菊川さん、明日休みだったよね。午後から本屋に付き合ってくれない?」

*******************************************

フゴーッ、フゴーッ、フゴーッ

・・・わたしは・・・準備体操なしに駅の階段を全力昇降していた。

すれ違ったおばちゃんが、ゴキブリを見るような目でわたしを見ていた。

朝食も昼食も食べていないのに、吐き気がする。。。

 

寝坊してこんな醜態を晒すくらいなら、昨日さっさと寝ておけばよかった。

服が決まらず徹夜してしまったとか、乙女か、わたしは!?

 

でもでも、、、仕事用の本を探しにいくだけとはいえ、オフに鮎川さんと2人きり。

服選びにちょっとくらい気合い入れても罪にはならないはず。

これってデートよね、デートでしょ、デートって言え!

 

平日の昼下がりは、どこに行っても空いている。

休みの不規則なシフト勤務は予定が立てにくかったり疲れが溜まりやすかったり、いろいろ不便はあるけれど。

こういう時はちょっと得したなぁと思う。

シフト勤務の人はわかってくれる感覚ではないだろうか。

 

改札で落ち合ったわたしたちは、駅前の大型書店でクレーム対応やコールセンターのオペレーター読本・・・

には目もくれず、

  • コールセンターの作り方の本
  • 業務効率アップと人件費の削減法についての本
  • 通信業界の歴史と未来の本
  • 携帯電話・格安SIMについて書かれた本
  • IT系の資格の本

・・・

といった本をカゴに入れまくっていた。

 

1つ目のカゴがいっぱいになってしまい、2つ目のカゴをとりにいこうとする鮎川さん。

たまらずわたしは声をかけた。

 

「鮎川さん。鮎川さん。ちょっとまってください。」

「何?」

「いったい何冊買う気なんですか?」

「何言ってるの、コレ、君が買って全部読むんだよ。」

 

ハアァ~~~~~~~~~~↑↑↑!?!?!?

数人のお客が「何事か!?」という目でコチラを振り返った。

 

冗談じゃない。

こんなに買ったら、今月の生活費が全部飛んでしまう。

それに、クレーム対応とかわたしの業務に役立つ本ならともかく、こんな本を読んでも今のわたしの役に立つとはとても思えない。

そしてなにより・・・こんなに読んだら、わたし、過労死するわ!!

 

その旨申し上げたところ、彼は一瞬動きを止めた。

が、しかし、数秒後には無慈悲なくらい容赦ないカゴへの本の投入を再開した。

 

「菊川さん。君はいつまで一介のオペレーターでいるつもりだい?」

「え・・・!?」

「君はもう管理職だ。今の君が応対するべきは”クライアント”と”コールセンターという組織そのもの”だ。」

 

彼が話を続ける。

相変わらず、本をカゴに入れる手は止まらない。

いつの間にかカゴは3つ目になっていた。

 

 

「確かに僕たちは通信サービスを使うお客様からお給料をもらっている。だけど今の君のお客様はエンドユーザーだけじゃない。」

「エンドユーザー以外のお客様、ですか?」

「今の君は管理職だ。クライアントやSV以上の上司も君のお客様ってことさ。」

「た、確かに。」

「だったら君は、顧客であるクライアントやSV以上の上司に対しても最上のサービスを提供する義務がある。そうだろ?」

「は、はい。」

 

「顧客であるクライアントや上司が何を見て、どんなことを前提条件にしているかくらいは把握するのが当然だ。そして彼らはこれくらいの本を読んだ上で君と話をしている。それでも読む必要はないと思う?」

「・・・」

「もう一度言うよ。いつまでオペレーター気分でいるんだい?もっと先、もっと前を見ろよ!」

 

仰るとおりだ。

だけど・・・

今でさえ時間が足りないのに、さらに勉強って・・・

 

 

 

帰り道。

結局本は、数冊しか買わなかった。

わたしがこれから取り組むべきことの量をビジュアル的に見せるための演出だったようだ。

 

そして別れ際。

夕日の中で、わたしをまっすぐ見て力強く語りかける彼の目は、とても魅力的だった。

 

「あんなに何でも自分で抱え込むのはもうやめろ。」

「えっ?」

「明日、仕事の割り振り手伝ってやるから、あんな疲れきった顔で仕事にくるなよ。」

「自分一人でやりきるなんてただの思いあがりだよ。自分が成すべきことを手段を選ばずやり遂げる。それが金もらって仕事する人間の流儀だ。」

*******************************************

翌日。

以前から周知されていたが、今日から常駐のクライアントに新しい社員さんが加わる。

何でも1年ほど前に転職で入社し、それぞれの常駐先で大きな成果を上げているらしい。

 

クライアントは自社サービスを全国展開している大企業だ。

そこに新卒ではなく転職で入るというだけでも相当な人物だという推測ができる。

しかも数字を残しているとは・・・かなりのやり手のようだ。

 

そして朝礼時。

前からいるクライアントが彼の名前を呼び、一言あいさつをするよう促した。

 

前に進み出たのは・・・彼だった。

3年前に努めていた派遣先の正社員だった彼。

一時は頼りがいを感じ、憧れていた彼。

そして・・・女であるわたしと、派遣社員であるわたしを踏みにじった彼。

 

乱暴に押さえつけられた手首の痛み

耳にこびりついて離れない卑猥な罵声

体中を舐め回された舌と唾液の気持ち悪さ

無理やり口に押し込まれた性器と、精液の生臭さ

そして、下腹部に走った強烈なあの感触

 

やっと夢に見ることも減ってきたのに。

あの身の悪夢が昨日のことのようにハッキリとした実感となって体を突き抜けた。

 

センター内に響く拍手の音で我に返った。

どうやら彼のあいさつが終わったようだ。

 

そして彼は、私の横をすり抜けてクライアントの常駐スペースに戻っていった。

 

(大丈夫。三年も前のことだし、向こうだって覚えてない。何気ない顔をしていればきっと大丈夫。)

そんな祈りにも似た希望は、、、いとも簡単に裏切られた。

 

それはすれ違い際、わたしだけに聞こえる小さなささやき。

それは、悪夢の再来を告げる宣告。

 

「菊川さん久しぶり。元気にしてた?」

本日の教訓

コールセンター管理職はクライアントと同じ立場で話をするための努力をしなければいけない。

次回予告

「やっぱわたしなんて、どこで何をやってもダメな人間なんですよ。」

 

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(たかなし むつき)と読みます。元某大手通信系コールセンター派遣社員。36歳で派遣脱出を達成!今はシステム運用の中の人です。コールセンター仕事術や転職など、自分でいうのもアレですが、いいこと言ってます。 >> 詳細プロフィール


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