この記事が役に立つ人
- いくら怒っても部下や後輩のミスが減らないとお悩みの人
- いくら叱っても子どもが「やってはいけないこと」をやってしまうお父さん・お母さん
- 部下や子どもに言い過ぎて後悔することの多い人
あなたが怒るほど部下がミスを繰り返し、子どもが「してはいけないこと」をする理由
こんな経験ありませんか?
・・・
最初は部下・後輩・子どもに成長してほしいという親切心・親心から注意していたけれど。
何度注意しても直らない。
言葉を変えても、実際に目の前でやって見せても、いくら重要性を説明しても直らない。
・・・
やがてそれは徐々にエスカレートし、やがて気が付けば人格を否定する言葉の混ざる、指導とはかけ離れた心のリンチ状態に・・・
- 「どうしてお前はやるなといったことをやるんだ?」
- 「お前の頭には味噌でも詰まってるのか?」
- 「幼稚園からやり直してこい」
- 「邪魔ばかりしやがって」
- 「お前なんか産まれてこなければよかったんだ」
・・・
これだけキツく怒れば、もう二度とそんなことはやらないかと思いきや。。
わかりますよね?
だから、この記事、読んでいるんですよね?
そう、やるんです、彼らは!
「言いすぎたな」とこちらが自己嫌悪を覚えるほど叱っても。
うなだれる彼、涙を流す彼女を見て、胸が痛くなるほど叱っても。
彼・彼女は・・・
同じミスを繰り返し、やってはいけないといったことをやり続けます。
だからさらにキツイ言葉をぶつける。
ここまでくると、あの日の親切心・親心はどこへやら。
まだ何もしていないのに、彼・彼女の顔を見れば反射的に怒りがわきあがる。
それまで言葉だけだったのが、机を叩いたり、ロッカーを蹴飛ばしたり、ひどくなると直接本人に。。
そしてある日・・・
最初は善意や愛だったはずなのに、なぜこんな悲劇が生まれてしまうのか。
それは人間の脳が「罪悪感を感じたことを繰り返すようにできているから」です。
いくら注意しても、叱っても、怒っても、怒鳴っても、なじっても、暴力を振るっても・・・
むしろやればやるほど、彼らはミスを繰り返し、禁止事項を破ります。
そして。
怒ったこと、怒鳴ったこと、なじったこと、暴力を振るったことに罪悪感を持てば持つほど・・・
あなたはそれを繰り返します。
・・・
彼ら・彼女らのためだと思ってやっていたことが、効果がないどころかむしろマイナスだと知ったら、ガッカリくるでしょう?
心中お察しします。
・・・僕も妻のためを思ってのことだと信じていたことが逆効果だと知ったときは、呆然としました。
でも、大丈夫です。
ほんの少しだけ、やり方を変えれば大きく前進します。
彼・彼女らに怒っても逆効果なのは「脳が罪悪感中毒になっているから」
今回のお話の元ネタは、菅原洋平さんという作業療法士の方が書いた すぐやる!「行動力」を高める“科学的な”方法 という本です。
この本には「先延ばし」「行動できない」を科学的に解消するヒントがわかりやすくいくつも書いてあるので、個人的にとてもオススメです。
で、この本の第1章「やるべきことにすぐ手をつけるコツ」にこんな記述があります。
「やってはならないこと」をやって、相手を失望させたとします。
(中略)
ですから必死に謝るわけです。
そうやって許してもらうと、脳は大きな満足感が得られます。そう、「やってはいけないこと」をやることで、結果的に脳は満足感を得ているのです。
ちょっとわかりにくいので、補足をしたうえで箇条書きに整理をします。
- 罪悪感を持つと脳の「両側内側前頭葉」という部分が活性化する
- 「両側内側前頭葉」はドーパミンをキャッチする部分が多い
- ドーパミンは期待感をつくる
- 罪悪感を持つと、「両側内側前頭葉」が多くドーパミンをキャッチするので脳内で期待感が高まる
- 「許してもらうこと」への期待が高まった状態で許されるとものすごく満足する
- 「怒られて、許してもらう快感の中毒」になる
・・・
こうして怒られれば怒られるほど、人はミスや禁忌を求めるのです。
ドーパミンはベータエンドルフィンなどとともに「脳内麻薬」と呼ばれるほど強力な快楽物質。
顕在意識でいくら「もう二度とこんなことはしない」と思っても、無意識は許される快楽を求めるのです。
・・・
この問題は怒られる側だけのものではありません。
怒る側も、怒ったことで罪悪感を持てばドーパミンに侵されます。
すると、相手が苦しみ、悲しむほど快楽を感じるという最悪の事態が起こります。
・・・
いい人だから、優しい人だからこそ怒りが爆発してしまう。
何とも皮肉な話です。
実話:こうして僕は、妻を精神崩壊寸前まで追い詰めました。
今から2年ほど前のある日のこと。
妻が「自分のコンサートがやりたい」と言い出しました。
何でも、数万円払えば某ミュージシャンと一緒にステージに立つことができて、そこで何曲か演奏できるとかなんとか・・・
そこまではよかったんです。
問題はそのあと。
彼女は
- 集客のためのウェブサイト作成
- チケットを売るためのネットショップ的な機能の構築
- 当日、会場で流すBGMや演出用ビデオの制作
・・・
等を僕にやらせることを前提に、このイベントへの参加を決めていました。
・・・
当時の僕は夜勤をしていましたから、そんな時間はまったくありません。
しかも、自慢するようで恐縮ですが、彼女が障害者である都合もあり、我が家はほとんどの家事を僕が担っています。
さらには、その頃はブログのアクセス・収益が伸び盛りだったので、手取り20万円そこそこの家計を支えるため自由な時間はすべてこっちに使いたかった。
さらにさらに。その少し前に彼女は骨折をしていて、入院中は夜勤をしながら見舞いに行き、退院してからも全家事をこなすなど、心も体もかなり弱っていました。
溜まりに溜った不満が一気に爆発し、僕は彼女に詰め寄りました。
- 夜勤明けの人間にそんな負担をかけてお前は鬼か?
- 人の自由は奪うのに自分はやりたい放題か?
- 家事を半分やり、家計の半分を負担する義務を放棄して何を言っている?
- 自分じゃできないことを勝手に決めてくるな!
・・・
ところが彼女は一度言い出したら聞かない性格で。
僕も頼まれたらNoと言えない性格だし、何より彼女の夢を叶えてあげたかった。
結局、準備を進めることになったのですが・・・
やるといったことをまったくやらないのです、彼女は!
逆に「やるな」といったことをやるんです!!
もう、故意にやっているとしか思えないほどでした。
「リストまとめとけ」とか「構成考えとけ」とか「皿洗っといて」とか「ご飯炊いといて」と言ってもまったくやらず。
「夜勤明けは声をかけるな」とか「パソコンに向かっているときは声をかけるな」といっても声をかけてくる。
・・・
彼女が口を開けば罵倒し。
口を開かなくても罵倒し。
何もなければ理由をでっちあげてでも罵倒し。。。
それでも彼女は「やれ」と言ったことをやらず、「やるな」と言ったことをやり続ける。
お互いが心をすり減らす日々が続きました。
・・・
その後。
まぁ、いろいろあったのですが、面白い話じゃないので結論だけ書くと。。。
ウェブページも、ネットショップも、BGMも、ビデオも・・・
彼女が「できない」と放り出したことも全部肩代わりして。
ほとんどできて、何人かチケット買ってくれたところまでいったのに。
彼女のメンタルが持たず。
コンサートは中止になりました。
・・・
「もうダメだ、これ以上頑張れない」と涙ながらに訴える彼女を心配することもなく。
それまでの罵詈雑言を悔いる事もなく。
・・・
わいたのはそれまでで一番の怒りと憎しみでした。
「あれだけ人の時間を使っておいて、もう一歩というところまできて何をいっているんだ」と罵りました。
「これまで使ってやった時間を返せ」と九官鳥のように繰り返しました。
毎日毎日、ことあるごとにそのことを繰り返しネチネチと責め続けました。
彼女の泣き顔を見てはものすごい後悔をするのですが、それでも怒鳴ることをやめられない。
・・・
今、思えば、完全に罪悪感によるドーパミン中毒です。
・・・
そんな日々がどれだけ続いたか。。。
・・・
そして彼女は。
うつ病と診断され、長い、長い闘病生活が始まりました。
僕は僕で、仕事に行って、帰ってきたら寝るだけの無気力な状態になってしまいました。
一番の解決策は「ミス」や「やってはいけないこと」を脳に意識させないこと!
あれから時は流れ。
つい最近まで、本当にいろいろありましたが、ようやく二人でいれば笑顔の絶えない家庭が戻ってきました。
彼女の衰えきっていた食欲は戻り、もうすぐ薬を飲まなくてもよくなると喜んでいます。
そして僕は僕で。
訴えられてもおかしくないことをやってしまいましたが、人生で一番謝ったと言い切れるくらいの謝罪をして、どうにか許してもらえて。
ブランクのせいか執筆時間は全盛期の10倍かかりますが、少しずつブログを書けるまでにメンタルが回復してきました。
だいぶ長くなったので、彼女のうつ病や、僕のバーンアウトがどうやって回復したかはまたボチボチ書いていきますが。。。
とりあえず今日は、どうやったらミスや「してはいけないこと」をやってしまうことが防げるか、についてまとめます。
いろいろ・・・本当にいろいろやりましたが。。。
結局、一番効果があったのはこの3つでした。
- ミスや禁止の実行を「仕組み」で回避する
- 否定形で指示しない
- アンガーマネジメントを「ほんの少しだけ」学ぶ
一つずつ解説します。
ミスや禁止の実行を「仕組み」で回避する
すぐやる!「行動力」を高める“科学的な”方法 にはこうあります。
テレビを前にして、「テレビを見ない!」と宣言するのは、いったん脳を「テレビを見るモード」にしてから、無理にテレビを奪おうとする行為です。脳に対して、「見ろ」という環境をつくりながら「見てはいけない」と強いているのですから、無理があります。
一度「ミス」や「やってはいけないこと」が意識に入ってしまうと、もうその時点でダメなんです。
よほど意思の力が強ければ跳ね返せるかも知れませんが、ミスによる自己嫌悪や怒られたことで心が弱っている場合、ドーパミンの誘惑に絡め取られ、無意識のうちに同じ事を繰り返します。
そこで僕は、とにかく家事を簡単にしていきました。
この頃、僕と彼女の間で衝突が起こる一番の原因が家事だったからです。
全部紹介していたら何日もかかるので、ここでは一例だけ紹介します。
例えば洗濯。
今思えばしょうもないことですが、「ネットに入れるもの、入れないもの」で毎回もめていました。
彼女が「これは入れてほしかった」といえば僕が「じゃあ、お前が自分でやれ!」と怒鳴り、彼女が泣く。
本当にしょうもないのですが、当時は毎朝繰り返されるこのやり取りが本当に苦しかった。
そこで。
全部、ネットに入れることにしました。
ネットに入れなければいけないものはあるけれど、入れちゃいけないものはありません。
だったら全部入れちゃえ、と。
まず【そのまま洗えるランドリーバッグ】という商品を買いました。
これはランドリーバッグがそのまま洗濯ネットになるというスグレモノ。
上の写真の通り、中に仕切りがついているので、洗濯物が絡むこともありません。
さらに洗ったらそのままベランダに持っていける時短アイテムでもあります。
その上でこんなルールを定めました。
服を脱いだら【そのまま洗えるランドリーバッグ】に直接入れること
すると、言い争いはピタリとやみました。
・・・
この考え方は家事だけじゃなく、仕事にも応用できます。
仕事のミスで小競り合いの絶えない職場にお勤めの皆様。
仕組み化できる仕事は仕組み化しましょう。
きっと気持ちの良い職場になります。
否定形で指示しない
と言われても無理ですよね。
「〇〇するな」は「〇〇しろ」の裏返しです。
指示をするなら・・・
「〇〇するな」ではなく「■■しよう」と指示しましょう。
ですのでこの場合。
「否定型で指示しない」だと否定型で指示をしてしまうので、「肯定型で指示する」が正しいわけです。
アンガーマネジメントを「ほんの少しだけ」学ぶ
「失敗」や「やってはいけないこと」を意識から遠ざけたら、次は「罪悪感」の根源である「怒り」に対処していきます。
とはいっても、これがなかなかに難しいわけですが。。。
罪悪感や怒りにとらわれないためにはどうすればいいのか。
そのために一番いいのは、マインドフルネスを継続したり、「苦しまない練習」や「反応しない練習」に書かれたノウハウを自分のものにすることで、怒らない、自分を見失わない心をつくることです。
ただ、これらの根本治療にはそれなりの時間がかかります。
怒りと罪悪感は僕やあなたを中毒に引き込んできます。
そこで僕が取り組んだのが、アンガーマネジメント。
マインドフルネスなどがメンタル・マインドを根本から変える「根本治療」だとしたら、アンガーマネジメントはわきあがった怒りをコントロールし爆発しないようにする「応急処置」という位置づけになります。
アンガーマネジメントには30ほどのテクニック(メソッド)があり、「深呼吸をする」や「7秒数える」といったすぐに手を付けられる手軽なものばかりです。
全部覚える必要はありません。
中古でいいので一冊本を買ってパラパラっと読み、自分にあったものを取り入れてみましょう。
僕が今でもやっているのは、「イラッとメモ」「腹立ち日記」。
要するに・・・腹が立つことがあったら、それを文字にすることです。
これは「筆記開示(=エクスプレッシブ・ライティング)」とも呼ばれ、科学的にもすぐれた怒りの解消法であることがわかっています。
アンガーマネジメントの本もいろいろ出ていますが。
簡潔に内容が整理されていて読みやすい、という意味でこちらをお勧めします。
まとめ
最近、こんなことを考えることが多くなりました。
「愛」や「善意」は大切です。
人には、愛と善意、あと少々の夢と勇気があればそれだけで前に進める時期はあります。
だけど。
人には必ず、愛や善意だけではうまくいかない時が必ずやってきます。
愛や善意をもって、何をするか。
どうすればその愛や善意をいい未来をつくるためにいかせるか。
そんなことを考え、学び、行動していく。
自分がそんな時期にきているんじゃないか。。。
・・・
この記事を「ミス防止や禁止事項を守らせるためのノウハウ」とか「怒りのデメリット」といった小さな話ではなく。
そういう大きなことを考えるきっかけにしていただけると、いいな、と思う次第です。
追伸:
「奥さんのうつ病、お前のせいじゃねーか!」と言われれば、返す言葉もありません。
本当に器の小さい、ひどい夫です。
どうぞ、気が済むまで罵って下さい。