この記事が役に立つ人
- うつ病患者との接し方が分からない人
- うつ病患者の看護・介護でストレスを溜めている人
- 負担にならない「怒り方」「励まし方」が知りたい人
※注意
この記事は自身がうつ病を経験し、うつ病になった妻を看護した経験則から書いたものです。
僕は心療内科医でも精神科医でもカウンセラーでもありませんので、実践する際は専門家に相談し、自己責任の上でお願いします。
うつ病患者を怒ったり、励ましたりするのはタブーなのか?
よく
- うつ病の人を「怒ってはいけない」とか
- うつ病の人を「励ますのは逆効果だ」とか
言いますよね。
これ、本当でしょうか?
確かにうつ病の人をむやみやたらと怒ったり、励ますよりはそっとしておく方が無難だとは思います。
だけど、そんなことを言ったら周囲の人は何にもできません。
うつ病患者の家族は人間です。
もっと言えば、メンタルの病気の治療に携わる専門家だって人間です。
言いたいことをグッとこらえて、いつ来るかわからない回復期をあてもなく待つのは辛すぎます。
・・・
結論から言うと。
もちろん、個人差はあるので、専門家と相談しながら、ということにはなりますが。。
ポイントさえおさえれば「うつ病=怒ってはいけない、励ましてはいけない」ではありません。
うつ病患者だって腹に据えかねたことがあれば怒って良いのです。
本当に大切な人で、一日も早く元気になって欲しいという気持ちがあれば、それを伝えてもいいのです。
・・・
ただ、確かにうつ病患者を追い詰める怒り方や励まし方もあると思っています。
間違えた怒り方や励まし方は、うつ病患、というより心が弱った人であれば誰でも追いつめてしまう可能性があります。
患者と介護する側、両方を体験して分かった「うつ病患者を追いつめない怒り方、励まし方」
僕がどう怒られたら追いつめられ、どう怒られたら受け止められた(もしくは受け流せた)のか。
そして、妻をどう怒ったら追いつめてしまい、どう怒ったら受け止められた(もしくは受け流してもらえた)のか。
この記事を書くにあたって振り返ったら、あることが見えてきました。
・・・
具体的に見ていきましょう。
例えば
- 「どうしてなんだ?」とか
- 「なんで薬を飲まないんだ!」とか
はうつ病患者を追いつめますが
- 「お前のくそっとろい動きを見てるとムカつくわ」とか
- 「そうやってやれと言ったことをやってもらえないとドッと疲れるわ」とか
は僕の場合、あまり気になりませんでした。
妻の場合、完全にスルーしていました。
・・・
同様に励ましのシーンを見てみます。
- 「早く元気になってね」とか
- 「無理しなくて良いからね」とか
はうつ病患者を追いつめますが
- 「●●が元気になったら、一緒に■■に行きたいなぁ」とか
- 「●●が無理しなくても、僕はまったく問題ないから」とか
だと追いつめられません。
・・・
何が違うか?
ポイントは「主語が誰か」です。
- 「どうしてなんだ?」とか
- 「なんで薬を飲まないんだ!」とか
- 「早く元気になってね」とか
- 「無理しなくて良いからね」とか
これらは全部、主語が「うつ病患者」です。
うつ病は脳の処理能力が低下する病気。
処理能力の低下した脳は「加減」ができません。
その結果、自分に向けて放たれた言葉をどんなことでも最重要ミッションとして受け止めます。
ただでさえ処理能力が落ちているのに、めいいっぱい「絶対に相手の満足いく返事・回答をしなきゃ」なんてプレッシャーをかけていますから、考えがまとまる訳がありません。
何か返さなきゃ、でもどういうことかわからない、言葉も出てこない・・・
その結果・・・
思考停止。フリーズ!!
・・・
ではどう話せばうつ病患者を追いつめずに済むでしょうか。
- 「お前のくそっとろい動きを見てるとムカつくわ」とか
- 「そうやってやれと言ったことをやってもらえないとドッと疲れるわ」とか
- 「●●が元気になったら、■■に行きたいなぁ」とか
- 「●●が無理しなくても、僕はまったく問題ないから」とか
これらは全て、主語が「うつ病患者への呼びかけを行った人」になります。
だからうつ病患者は「【あなたが】そう思っているということを言っているんだな」と一歩引いて受け止めることができます。
もちろん「ムカつく」とか「どっと疲れる」などと言われれば、あまりいい感情は湧きません。
だけど、自分ごととして必要以上に重く受け止めずに済みます。
・・・
この伝え方は回りくどいので、完全にスルーされてしまい、こちらの怒りや励ましが伝わらず「あれれ」となってしまう可能性はあります。
だけど。
たとえどんなに回りくどい言い方しかできないとしても。
うつ病患者を前にしたら、何があろうと黙っておかなければいけない!
というわけではなく
本人に矛先を向けなければ言葉にして、口に出していいんだ!!
と知るだけでも、気の持ちようは大分変わってきます。
実際、僕もそうでした。
何度も妻をへこませては自己嫌悪に落ち込んだものですが、たとえ本人に伝わらなくても、自分のイラ立ちや早期回復への願望を口に出せるということを知ってからは、ずっと心が軽くなりました。
うつ病患者を追いつめる「最悪の一言」!
僕が言われて一番傷ついた、そして僕が妻に使ってしまい一番傷つけたのが
なんでうつ病なんかになったんだ?
でした。
・・・
あんな苦しいモノ、なりたくてなったわけじゃねーわ!!
頭がまともならそう言い返すのですが、うつ病だとそれができない。
言い返したいのに、言葉が出ない。
そのことが情けない、辛い、苦しい。
・・・
思考停止!フリーズ!!
苦しくて、苦しくて、苦しくて仕方ないのに。
それをまるで自分が望んでなったかのように言われると、ものすごく傷つきます。
・・・
僕は某ブラック企業の社長に言われました。
今なら言えます。
お前のせいだ! と。
でも、あのときは頭を抱えてうめくしかなかった。
苦しかった。
本当に苦しくって、悲しくって、悔しくって、情けなかった。。。
・・・
そして時は流れ。
自分があんなに苦しんだのに、僕はそれを妻に向かって使ってしまいました。
うつ病の介護は、先の見えない戦争です。
ゴールが見えれば頑張れるけれど、それが見えないから本当に苦しい。
そして疲弊してくると、よほど注意していても出ちゃうんです、つい、この言葉が。。。
・・・
職場でも同様です。
くっそ忙しい職場で、モタモタオドオドしているうつ病社員を見てイライラしたり、心配事や腹立たしいことを抱えていたりすると、よほど注意していないと、ついつい出てしまうのです、この言葉が。
・・・
というわけで。
うつ病の家族や部下・同僚を持つ会社員の皆様。
お願いです。
「どうしてうつ病になったんだ?」だけは、絶対に、絶対に、絶対に言わないで下さい!!
まとめ
内容もそうですが。
僕がやられて結構しんどくって。
妻もしんどいと感じていたのが。
大声で話されることと、早口で話されること
でした。
大声で話されると、責められてる気がするし、早口で話されると急かされてるような気がして落ち着かないんですよね。
個人差はあると思いますが。
話す内容より、ペースとボリュームを少しだけ落として話してもらえると、うつ病の人はとてもとても助かります。
この記事は、自分と妻のことを振り返りつつ、この本を読み返して書きました。
妻も言っていましたが、うつ病になったことがない人が「うつ病とはどんな病気なのか」を知るのに最適な本だと思います。
・・・やっぱり、僕なんかとは違って、本当の文才がある人の書く文章は面白いです。